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どうぶつ畑

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わたしVS暴れん坊や

わたしVS暴れん坊や

ヤギのオスというものは本来とても危険な動物だ。

大きな角で頭突きをし、
角を振り引っ掛けてひねりを加えたりもする。
力も強く、頭突きで鉄の柵を折ったり、
鉄の扉を変形させてしまうほどだ。
当園にいるオスはせいぜい45キロ前後で
なんとか押さえられる大きさだが、
これ以上になるととてもかなわないだろう。

黒ヤギの黒い奴は人を怖がったので、
人に対して頭突きをしたりするようなことはまったく無かった。
わたしがはじめてみたヤギのオスというのはそんな奴で、
正直本当の『ヤギのオス』というものを知らなかった。

だからあんなにかわいらしかった暴れん坊やが豹変したときには
心のそこから驚いた。

黒い奴が去勢されてしばらくたつと、
オスとしての魅力が薄れたのか、
それともおかまになったことに双方気づいたのか
メスたちの黒い奴離れが始まり、
代わって坊や通いが始まった。

とはいえはじめのうちは仕方なく、
まああんたでいいわ的なところがメスたちには見られたが、
時がたつにつれ彼にオスとしての貫禄がでてくると
それはそれは熱狂的にメスは彼にアプローチを繰り返した。
彼のメスの迎え方も慣れたもんで、
彼の柵の前はとてもにぎやかになった。

そうなるととたんに気が荒くなる。
何度も何度も柵に頭突きを繰り返し、
舌を出してうべうべ言い、
前脚でキックしておしっこを飛ばす。

柵の前のメスの元に行きたいけどいけない。
彼はさぞかしイラついたことだろう。
そこへわたしたちは入らなくてはいけないのだ。

隔離柵の関係上、どうしてもそうしなくてはいけなくて
そのたびに気を引き締めて入った。
もたもたせずさっと用事をすます。
でないとやられるのだ。
いや、それでもやられるのだ…。

とにかく痛い。
体の大きさからいっても頭突きがはいるのはちょうとすねのあたり。
角振りはまさに太腿のあたり。
毎日のように青あざをこしらえ痛い思いをする。
これがオスのヤギというのもだとイヤってほど思い知った。
これが普通で、黒い奴が特別だったのだ。

彼は人を恐れない。
小さなころから人と接してきていたのでちっとも恐怖心が無いのだ。
頭突きをする理由というのはいろいろあるのだろうが、
しかしどうもなめられている感がある。
わたし(達)は坊やに馬鹿にされているのか?
劣位に見られているのか?
冗談ではない。
奴になどなめられてなるものか。

どうすればよいか。
わたしは考えた。
ヤギは犬と違ってしつけができない。
イケナイ、と教えたところで奴には通じないだろう。
ではどうやってわからせれば良いのか。

ヤギは頭突きで力比べをし、結果順位が決まる。
何度も何度も角を突き合わせ、引いた方が負けだ。
そうか、奴に勝てばいい。
わたしがヤギの方法にのっとって奴とけんかすればよいのだ。

坊やがむかってきたとき、わたしは立ち向かうことに決めた。
だがわたしは素手だ。
角を持ち、角と角の間にげんこつを食らわした。
痛い…。
ヤギの角にげんこつはあまりに無力だ。
だがわたしはがんばった。
何回かやるうちに彼は驚いたのか少し距離を置いた。
おっ!?勝った?
わたしは意気揚揚として(急いで)彼のもとを去った。

反撃を食らって彼は面食らったようだ。
目をぱちくりさせていたが、そこはヤギ、
次の時には元通りに向かってくる。
なんどかやってわからせるしか手は無いようだ。

何度か手合わせするうちにコツがつかめてきた。
げんこつではなく足を使う。
立ち上がって頭突きしてきたときに足裏で受けてやるのだ。
はたから見たら決して見られたもんではないだろう。
決して苛めているわけではない。
(むしろいじめられているのはわたしのほうだ。)

そうこうしてわたしと坊やの間にはなんとなく順位がついたようだった。
でもそれはやっぱりあいまいで気を抜くと頭突かれるので
彼のところへ行くときは常に緊張していた。

彼は決して人嫌いではない。
むしろ大好きだ。
頭突きは、人をなめているせいもあるのだろうが、
角を付き合わせる相手がいないことや
メスと交尾ができないことへのストレスでもあるんだろう。
足で頭突きを受けてやると楽しそうだ。

やりすぎによる人嫌いを心配したが
そんなことはどうやら取り越し苦労のようだった。
わたしたちは新たな関係を築けているようだった。

だがそれはわたしだけで、
周りは相変わらずなめられているようだった。
いい大人がヤギ1頭に逃げ惑い、
頭突かれなどしている様はなんとも滑稽だ。

動物が人を見るって本当だ。
やられている同僚を尻目にのんきにそんなことを思ったりして、
わたしは面白がってその光景を眺めていた。

2004年3月8日(月)の日記より


なんとなくわたしに負けてしまった暴れん坊や。そのうっぷんを晴らすため奴の取った行動は・・・。
暴れん坊や暴れる



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